新*今日の漢字* 「風」
今日は外孫の預かりはなく、平常業務といった感じでしょうか。
資源回収の新聞の束と資源ごみのミックスペーパーをそれぞれの集積場所に持って行った時、
11月半ばの寒さが身にしみました。
では・・・
新*今日の漢字*
「風」 音読み フウ フ 訓読み かぜ かざ
画数 9画 部首 風
では常用字解で調べてみましょう。
形声 音符は凡(はん)。
甲骨文字は鳥の形。
神聖な鳥であるので冠飾(かんむりかざ)りをつけている。
鳳(ほうおう)のもとの形と同じである。
その鳥の左や右上に音符の凡を加えている。
天上には竜が住むと考えられるようになり、風は竜の姿をした神が起こすものであると
考えるようになって、鳳の形の中の鳥を取り、虫(き(竜を含めた爬虫類(はちゅう
るい)の形))を加えて、風の字が作られ、「かぜ」の意味に用いられる。
「かぜ」の意味は、空気の動きによってその意味を表したのではなく、神聖な鳥の姿や
竜のような姿をした霊獣によってその意味を示しているのである。
古い時代には、風の形をした神、風神と考えられ、その風人が各地に出かけて行き、
人々に影響を与えて風俗(その地域独自のしきたり、ならわし、生活のしかた)や風物
(その土地独特の景色や産物)が生まれると考えられた。
(白川静 常用字解 平凡社)より
次に字統を調べてみました。
形声 声符は凡(はん)。
卜文の風の字形は鳳形(ほうけい)の鳥の形で、その左や右上に声符として凡の形を
加えていることがある。
冠飾(かんしょく)をつけて、神聖な鳥の形にかかれていいる。
[説文]十三下 に「八風なり」として、東方を明庶風、東南を清明風、南方を景風、西南を
涼風西方を閶闔風(しょうこうふう)、西北を不周風、北方を広莫風(こうばくふう)、
東北を融風とする八風の名をあげ、「風動いて、蟲生ず。故に蟲は八に化す。
虫(き)に從ひ、凡聲」とするが、卜文・金文には風に作る字形はない。
風を八風に分かつことは、卜辞にみえる四方の方神と、その使者たる風神の名に起源する
ものと思われる。
卜辞に「貞(と)ふ。東方に禘(まつり)せんか。析(せき)と曰ふ。風を(けふ
(上下に劦+口))と曰ふ。年(みのり)を(いの)らんか」「貞(と)ふ。南方に
・・・」(以下 西方、北方の文、省略)
のように卜する例があり、上帝を祀(まつ)るのと同じく、禘(てい)の祭儀をもって
祀っている。
自然神としても重要な神々であった。
この方神・風神の名が[山海経(せんがいきょう)]のうちにも古伝として伝えられていて
・・・(以下紹介文は省略)
(山海経と卜辞にみえる神名・風名の対比省略)
・・のようにほぼ対応する関係にあり、殷が滅びたのちも、その伝承が一部の巫祝(ふ
しゅく)の間に保持されていたことが知られる。
方神は日月を掌るものであり、風神はその使者として神意を伝達するものであった。
[山海経]にみえる神々には「四鳥を使ふ」のように、鳥形の神の使者として使うものが
多い。
卜文の風が鳥の形、それも鳳(ほうおう)の形でしるされているのは、風はその神鳥の
羽ばたきによって起こると考えられていたからであろう。
(書、山海経、左伝、淮南子中の例 省略)
このような鳥形風神がいまの風の字形に移行した時期は明らかではないが、秦(しん)
の会稽刻石(かいけいこくせき)には篆文と同じ字形が用いられている。
風を天上にいる竜形の神が起こすものと解したのであろう。
卜文においても、雲や虹(こう)などは、みな竜形の神とされていた。
風の用義は甚だ多く、字書には二十数義を列するが、風がもと方神の使役する鳥型の
使者であること、方神の意を受けて、これをその地域に宣示し風行させるものである
こと、これによってその地域の風土性が特色づけられ、その土俗が規定されるもので
あるという観念が古く存していたことは疑いない。
これによってその風土・風俗が規定され、風光・風物・風味・風格・風骨を形成すると
されたのであろう。
それが歌詠に発するものは風、すなわち民謡である。
風の字の持つ多様な訓義は、このような古代風神の観念から、おおむねこれを解する
ことができる。
風邪のごときも、この神によってもたらされる神聖病であった。
風邪は自然と人間の生活との媒介者であり、その生活の様式を規定するもので、その
ような営みを風化といい、風流という。
(白川静 新訂 字統(普及版) 平凡社)より一部省略いたしました。
まず、浅学の私が一部省略するという、暴挙を致しましたことをお詫びします。
今日の一枚で紹介いたしますが、三段に分かれた字統の1ページ以上の量がありました。
では、現在の風の形は「虫」の字形を含みますが、甲骨文字や金文では「鳥」の形をしていたという
ことですね。
この「鳥」から「虫」以降の時期は定かでないですが、秦の時代には「虫」を含む字形になっていた
ようですね。
風は四方の神たちの使者であり、この神の意を受けてそれぞれの地域に伝え、これによってその地域
の風土性が特色づけられたという観念があったのですね。
簡単に「鳥」から「虫」と書きましたが、本当は「鳳凰(ほうおう)」から「竜」ですね。
ちょっとロマンチックな感じもします。
ちなみに、日本で有名な風神雷神図の風神は・・・いわゆる雷様のような鬼の形相の神でしたね。
では今日の一枚は・・・
字統の風のページです。
右上の段から始まり、左上の段までずっと風にについて書かれています。
見た瞬間、頭を抱えてしまいましたが、これだけの量の解説があるというのは、白川先生と古代の
人々にとって、とても大切な字であったということですね。
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